純愛シネマ

アクセスカウンタ

zoom RSS 「終の住処」 

<<   作成日時 : 2009/08/22 11:18   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

「終の住処」       磯崎 憲一郎 著     第141回芥川賞受賞作



 30歳を過ぎなんとなく結婚してみたものの、妻との関係は何年たっても何かしっくりしない。 そんな思いを抱いたまま男は50歳を迎えた。
結婚で男が手に入れたものは、何だったのか。
一番大きなものといえば、やはりかわいい娘のために建てたマイホームだろう。
しかし、それも娘が巣立てしまった今となっては、年老いた夫婦のための ”終の住処” 。
男は、自身の結婚生活を振り返り、もはや後戻りできない人生と残された持ち時間がそう長くないことを思い知らされる。

 結婚早々、不機嫌な妻の態度に違和感を感じはじめる男だが、その思いは子供が誕生しても変わらず、もはや離婚もやむなしかと思い悩んでいたある日、男は同じ屋根の下に暮らす妻と11年間一切口を利かない生活を始める。 しかもその間彼は複数の女性と浮気を繰り返す。

 妻はいったい何を考えているのだろう? 
 なにか魂胆でもあるのだろうか?

 晴れがましい夢や愛情など何もなくても、とりあえず結婚さえすれば、人生なんとかなるだろうととたかをくくっていた主人公。
しかし、一緒に暮らす妻と打ち解けることができず、悶々とした日々を送る結婚生活はやはり空しい。

 小説は、平凡な男の独断と偏見に満ちた半生記といったところだろうか。
一見平穏無事に暮らすサラリーマンの心に芽生えた小さな不安が、男の身勝手な妄想によって肥大化され、現実がゆがめられていく様が淡々と描かれている。

 子供を育て、マイホームを建て、会社でもそこそこ出世した主人公は、世間一般には十分幸せだ思える。

 平凡な暮らしの中にも、幸せだと思える瞬間はたくさんあったはずだろうし、不機嫌そうに見える妻とも腹を割って話し合うチャンスも見つけられただろう。
 
 だが、男はきちんと妻と向き合おうとしなかった。
それどころか、外に浮気相手をつくり埋め合わせをしようとした。

男は、つねに冷めた傍観者のような視線を妻にながかけ、彼女を愛そうとするでもなくかといって、嫌う理由もないといった優柔不断な態度をとり続けてきた。

 結婚生活とは、異なる人間同士が互いにぶつかり合い、時に手を携えながら築きあげていくものだという視点が欠けていることがこの男の悲劇だろう。
そのことにやっと気づいたとき、人生の大半がすでに消費されているという現実がなんとも切ない。

 これではいけないと薄々感じながらも、なにもしないまま時間だけがいたずらに過ぎていく。

 妻とは一体何者ぞ?
ミステリアスな伏線が気になるところだが、その答えは、いとも簡単。  
長年連れ添った夫婦は、顔つきまで似てくると言われるが、この小説の結末もまさにそのとおり。

 人生に流されていくことの恐ろしさが、後味の悪い余韻となっていつまでも残る小説だった。
しかしながら、 気心の知れた夫婦が夕日のような安らかな温もりを感じながら老いていくのもまた ”終の住処” の大きな役割だとすると、彼の人生もまんざらではなかったと思えてくる。



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「終の住処」  純愛シネマ/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる