「チェイサー」 監督 ナ・ホンジン 出演 キム・ユンソク ハ・ジョンウ ソ・ヨンヒ “犯人はこいつだ!早く捕まえてくれ!” 忌まわしい猟奇殺人犯を血眼になって追いかけるジュンホ。 一筋縄ではいかない殺人鬼に翻弄され、苛立ち焦る男の激情に息がつまりそうだった。 食らいついたら離さないすっぽん顔負けの執念、金づちを振り上げる鬼の形相は、あの ”オールドボーイ” の悪夢を思いだす。 元刑事で風俗店経営者の主人公ジュンホは、斡旋したデリヘル嬢の相次ぐ失踪を不審に思い探りを入れていたところ、偶然殺人鬼を発見した。 それにしても、殺人鬼ヨンミンにあれほど執着する不良中年ジュンホの動機はいったい何だったのだろう。 正義や愛ともまるで違う、まるで死者の霊が憑依しているかのような執念深さは気味が悪い。 しかし、そんな彼も一人残されたミジンの娘の不憫な姿に心を動かされたのか、あるいは後ろめたさからなのか後半の彼は明らかに違って見えた。 ミジン親子になり代わり復讐を果たしたジュンホ。 不謹慎かもしれないが、そんな彼に内心ほっと安堵したのも事実だ。 血の気の多いジュンホと対照的に描かれているのが、警察のノー天気ぶりだ。 事件の不条理もさることながら、頼りになるはずの警察が最悪の事態を招いてしまったとは、あまりにお粗末で呆れてしまった。 また、殺人現場周辺の住人は、もっと早く異変に気付き、手を差し伸べることはできなかったものか。 とはいえこの映画で何より問題だと感じるのは、デリヘル嬢という仕事の危険性について彼女らがあまりに無防備だったということではないだろうか。 ミジンが携帯に残した後悔の言葉は、あまりに拙く切なすぎる。 映画は、実在の事件をもとにさまざまな問題点をあぶり出し、事件をとりまく人間の本性に果敢に迫っていく。 ことに、殺人鬼の非人間性、異常性癖を生々しく描く場面や、犠牲者の断末魔の叫びは、あまりにリアルで胸がつぶれるほどだった。 しかし、これほど救いようのない物語にも、一筋の光を見出そうとするラストは、静かな安らぎと清涼感すら漂っており、ふと我に返った時の快感はことのほか気持ちのいいものに思えた。 |
<< 前記事(2009/07/14) | ブログのトップへ | 後記事(2009/07/27) >> |
タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
---|
内 容 | ニックネーム/日時 |
---|
<< 前記事(2009/07/14) | ブログのトップへ | 後記事(2009/07/27) >> |