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zoom RSS 「ダウン・イン・ザ・バレー」

<<   作成日時 : 2008/04/04 13:51   >>

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「ダウン・イン・ザ・バレ−」
監督   デビッド・ジェイコブソン
出演   エドワード・ノートン  エバン・レイチェル  デビッド・モース  ローリー・カルキン

 
 かつてのどかな西部劇の舞台でもあったロサンゼルス郊外には、空港や巨大フリーウェイの建設とともに、没個性的な新興住宅地が広がっている。

 そんな町を嫌っている17歳の少女トーブは、威圧的な父親ウェイドと内向的な弟ロニーと三人暮らし。
 
 退屈な日常に飽き飽きしていた彼女は、時代遅れのカーボーイスタイルで現れた ハーレンに夢中になる。

 古き良き時代を髣髴とさせる彼の言動は、トーブには新鮮で魅力的に映った。慣れた手つきで馬を操るその姿は、まるで白馬の王子様のように思える。

 弟 ロニーも気さくな彼を慕い、早撃ちの見事な腕前を披露する彼に尊敬の眼差しを送る。

 しかし、刑務官ウェイドは流れ者のハーレンに胡散臭さを感じ、交際を禁止した。

 ”車は嫌い!”と言いつつも、ガソリンスタンドで働かざるをえないハーレン。

 ロマンティックな乗馬デートに誘うハーレンに向かって ”馬泥棒!” と罵る牧場主の登場あたりから、甘い空気は一転し、彼の嘘と矛盾に満ちた私生活が暴露されていく。

 幼いロニーに拳銃を握らせたことからトーブは彼を疑い始め、駆け落ちしようと誘う彼を拒む。かっとなった彼は、うっかり銃を弾いてしまう。

 ハーレンはロニーを馬に乗せ逃走する。 その姿は、まさに西部劇のヒーローさながら。 
でも、白馬が疾走しているのは、一面アスファルトが敷き詰められた新興住宅街の一角だという事実。
このギャップが切ない。

 目覚めた時、彼は憧れの西部劇の住人となっている。
それが映画のセットとも知らず、彼は懐かしそうな表情を浮かべ嬉々として踊りの輪に入っていく。

夢みるハーレンに銃弾が飛び、激しい銃撃戦が展開された末、ウェイドの放った銃弾に彼は倒れた。

 観終わった後、不思議な余韻が後を引く。

 ハーレンは精神異常者だと考えると、容易に腑に落ちる話ではあるが、それはウェイド側の論理だろう。

 理想を追うあまり、現実逃避した男の行き着く先は、妄想の世界。
ハーレンは、思春期の姉弟の思いをそのまま体現している純粋な男のようにも思える。

 しかし、少年のまま大人になったハーレンは破滅へと向かう。
 恋愛は、幻のように終わりを告げ、社会の価値観はひ弱な彼を捻じ伏せた。

 両者に共通するのは、”銃”の所持。  変わらない銃社会と繰り返される悲劇の現実がここにもある。
 今だ成熟しきっていないアメリカ社会の矛盾が、ロマンティックな映像とアコースティックな音楽にのせて語られる。

 この映画の魅力は、なんといっても登場人物たちの個性が際立っていることだろう。
まるでアメリカ社会の縮図を見るようだ。
 
 なかでも、掴みどころのない不思議な存在感を醸し出すノートンの演技は、素晴らしい。

 社会と同化できない脆弱な男は、常に社会との間にギャップを感じ、それを埋め合わせるように妄想を膨らませていく。
それは、ナイーブなやさ男ハーレンが、鏡に向かって見事な拳銃さばきを見せる映像にも現れている。

 純粋な狂気をはらむハーレンの夢と挫折の人生にそっと思いを馳せるかのようなラストに、ホッと救われる思いがした。
詩情漂う余韻が何ともここちよい映画だった。



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